初期費用となるものにはどんな項目がある?
まず、賃貸住宅でかかる初期費用にはどのようなものがあるのでしょうか。以下に、ざっと表にしてみました。
関東の例を見ていくと、まずは「敷金」「礼金」があります。敷金は、修繕費用や家賃滞納時に充てられる預け金、退去時には部屋をきれいに使っていれば返却されることもあります。一方、礼金は大家さんに対する謝礼。ですのでこれは退去時に戻ることはありません。通常「敷金」2ヶ月分、「礼金」2ヶ月分が一般的でしたが、近年では敷金、礼金がかからない物件も出てきています。
このほかに存在するのが、「前家賃」。家賃支払いは通常、1ヶ月先払いとなります。例えば9月15日に入居をした場合は、入居時に10月分の前家賃を支払い、9月分は日割り計算で支払うことになります。
プラス、存在するのが「仲介手数料」。不動産会社に支払うお金で、1ヶ月の家賃に消費税というのが相場。さらに、賃貸物件の場合は入居者に加入が求められることが多い「火災保険料」(1万5,000円~2万円)、物件によっては、鍵の交換費用(1~2万円)が入居時に徴収されることもあります。
また、関西では商習慣が異なっていて、関東の「敷金」「礼金」に代わるものとして「保証金」「敷引き」があります。保証金が4ヶ月分、敷引き2ヶ月分がおおよその目安で、敷引き分は確実に戻ってこないものの、更新料が含まれている場合も多く、一概に関東方式と比較することはできません。
項目 | 相場 | 内容 | |
---|---|---|---|
関東 | 礼金 | 家賃の0~2ヶ月 | 大家さんに払う一時金。謝礼の意味合いが強く契約が終了しても通常、返還はされません。礼金は慣習によるもので、法律的な根拠はありません。また金額の基準も地域差が濃厚なもの。 |
敷金 | 家賃の1~2ヶ月 | 大家さんに払う預け金。意味合いとしては、家賃の不払い時などに備え徴収されるもの。賃貸契約の終了時には、未払いの賃料などがなければ返金されるのが通常です。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、借主に故意、または不注意や過失による毀損・汚損などがなければ、修繕の負担義務(原状回復義務)はないという考え方が示されています。 | |
関西 | 保証金 | 家賃の4ヶ月~7ヶ月 | 関西地方などで賃貸住宅を契約する際にかかる契約費用。関東における敷金のようなもので、更新料などが一体になっている場合もある。 |
敷引き | 家賃の2ヶ月~4ヶ月 | 退去時に保証金から確実に引かれる費用。(初期費用として支払うものではない) | |
前家賃 | 家賃の1ヶ月 | 賃貸住宅において、契約した月の翌月の家賃を契約時に支払っておくことをいいます。 | |
日割家賃 | 家賃の日割り計算金額 | 賃貸住宅において、契約した月の家賃を日割り計算した金額。 | |
仲介手数料 | 家賃0.5ヶ月分~家賃1ヶ月+消費税 | 仲介を行う不動産会社に支払う手数料 | |
火災保険料 | 1万5,000円~2万円 | 賃貸住宅では火災保険が入居条件となっている物件が多い。通常は2年契約が基本。入居者が選ぶことも可能。 | |
鍵の交換費用 | 1~2万円 | 物件によっては、入居時に鍵を新品に変更するための費用。 |
関東では家賃6~7ヶ月分+引越し代が初期費用の目安
また、初期費用として忘れてはいけないのが引越し費用。もちろん、家具や電化製品の量、移動距離によって引越し費用はまちまちですが、大まかな目安として以下の金額を参考までにあげておきます。
●単身者 1Kからの引越し想定
近距離(同一県内や隣県) 2万円~4万円
●ファミリー 戸建てからの引越し想定
近距離(同一県内や隣県) 4万円~10万円
これらの費用を合わせて考えると賃貸住宅を借りる際の初期費用は、関東では以下の金額が相場になってきます。
家賃6~7ヶ月分+(火災保険料+鍵交換費用)+引越し代金
■単身者の場合 家賃7万円(日割り家賃は月中15日に入居として計算)
敷金 | 14万円(2ヶ月) |
礼金 | 14万円(2ヶ月) |
前家賃 | 7万円 |
日割家賃 | 3万5,000円 |
仲介手数料 | 7万5,600円 |
火災保険 | 1万5,000円 |
鍵の交換費用 | 1万円 |
引越し費用 | 3万円 |
合計金額 51万5,600円
■ファミリーの場合 家賃12万円(日割り家賃は月中15日に入居として計算)
敷金 | 24万円(2ヶ月) |
礼金 | 24万円(2ヶ月) |
前家賃 | 12万円 |
日割家賃 | 6万円 |
仲介手数料 | 12万9,600円 |
火災保険 | 2万円 |
鍵の交換費用 | 2万円 |
引越し費用 | 6万円 |
合計金額 88万9,600円
どうやったら安くなる?
では、初期費用を抑えるためにはどうしたらよいのでしょうか?
敷金、礼金が少ない物件を探す
最近では、特に首都圏では、敷金・礼金を2ヶ月分ずつではなく、礼金を少なくしたり、まったく費用がかからない物件も登場しています。
ただし、ここで注意しておきたいのが「敷金」をどう考えるか。賃貸住宅の退去時には、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、入居者に故意、または不注意や過失による毀損・汚損などがなければ、修繕の負担義務(原状回復義務)はないという考え方が示されています。
しかしまだまだ一般的には、修繕費用が敷金から引かれるのケースが多いのも事実。そのため敷金を支払わないということは、退去時に修繕費用が請求されることにもなります。ですので、まずは礼金が少ない物件を探したり、礼金が下がらないか不動産会社と無理のない範囲で交渉してみるのも一つの手段です。
また、近年では敷金0・礼金0の物件(ゼロゼロ物件)も出てきていますが、こうした物件では、保証会社に家賃の半額を支払うことで保証人の代わりになってもらうシステムが採用されていることが多くあります。
保証会社によっては、家賃滞納をした場合、強硬手段で退去させられるなど問題となるケースもあります。一時的な居住であったり、家賃延滞などトラブルを起こさなければもちろんメリットもあるので、よく考えて初期費用とのバランスを考えましょう。
仲介手数料不要物件を探す
まれに、不動産会社が自社所有物を貸す物件があります。この場合、入居者は貸主と直接契約になるため仲介手数料が発生しません。
また、最近では仲介業務の手間を削減・効率化することで仲介手数料を0.5ヶ月分などに引き下げる会社も出てきました。こうした仲介手数料が少ない、またはかからない物件を探すこともおすすめです。
フリーレント物件を探す
フリーレントとは、入居後の一定期間の家賃が無料になる物件です。通常1ヶ月から3ヶ月程度の家賃を無料とされることが多く、中には6ヶ月間が無料という物件もあります。
これは、賃貸オーナー側が家賃の値下げや空き室のリスクを長く抱えるよりは、無料期間を設けて物件を借りてもらいやすくしようというのが狙い。こうした物件を選べば初期費用を抑えることが可能になります。
ただし、フリーレント物件の契約では一定期間内の解約に対して違約金や、フリーレント期間相当分の賃料支払いなどが求められます。また、賃料を下げない代わりにフリーレント期間を設けているため、長期にわたって居住する場合はトータルでは割高になってしまう可能性もあるので、自身のニーズを見極める必要があります。
引越し費用を抑える
実家などから初めて一人暮らしをする場合などは、家具や電化製品を新たに購入することが多いので、引越しの荷物も少なくて済む場合が多いもの。そんな時は、レンタカーや友達にお願いして、引越し費用を抑えるもの一つ。
また、引越し料金は、繁忙期かどうかで値段が大きく変動してきます。春休みなどの引越しシーズンを避けたり、土日ではなく平日を選ぶと費用を抑えることが可能です。さらに、通常エレベーターのない物件での2階以上での引越しは費用が割増しになります。物件選びの際にこの点も考慮しておくとよいでしょう。
最近では、引越し業者の複数見積もりをWebで簡単にとれるようになっていますので、一括見積で価格を抑えながら条件のよい業者を選んでみましょう。
初期費用を分割払い?
最近登場したのが、賃貸契約に関わる初期費用をクレジットカードで分割払いができるサービス。これは、不動産会社とクレジットカードの信販会社が手を結んだもので、対応する不動産会社はまだ少ないものの、大手企業も参入し、その数は徐々に増えています。
当然ながら、通常のクレジットカードの分割払いやリボ払いと同じように、利子がついて現金一括払いとは総額が異なります。また、初期費用の分割払いといっても、全額を分割できるかはケースバイケース。仲介手数料は分割払い不可など条件がそれぞれ異なることが多いので個別確認が必要です。
通信事業者が携帯電話の機種代を分割払いにしたサービスと同じようなしくみと考えられます。上手に利用すれば、まとまった金額を支払うことなしに賃貸住宅の契約が可能となりますが、その分月々の支払いが増えるのも当然。
また、短期間で再度転居が必要になった時などは分割払いにした初期費用が残ってしまうので、こちらも慎重に利用する必要があります。クレジットカード利用可能賃貸特集
初期費用の負担は軽減される方向に
ひと昔前までは、賃貸住宅の契約は家主側の都合が尊重される傾向にありました。しかし、近頃は人口減少などもあり、賃貸住宅の供給過多の状況に移行しています。
その分、賃貸契約の初期費用、敷金・礼金・仲介手数料を軽減する動きや、フリーレント、分割支払いなどの新たなサービスも登場しています。
ただし、こうした値引きやサービスは、築年数や駅からの距離などとも関係しています。どのような条件を重要視するのか、住まいに対するニーズをしっかりと洗い出したうえで、賢く利用していきましょう。賃貸物件を探す